2013年08月20日

Fender Blues Junior の修理

 時事の事はここでは暫く置いて、本道に戻ります。
先日、若い頃、ギター少年だった頃に僕のアイドルだったギタリストが、道でアメリカ兵に殴られて死んでしまったので、自主的に喪に服していたのですが、喪が明けつつあるので、ブログを本筋に戻して再開しようと思います。けっこうネタはたまって来てますので。



KC4B0330.jpg

 Fender Blues Junior の修理をしました。先日友達になった超絶ギタリストのアツミくんの依頼です。この間彼がうちに遊びにきたときに『ここは大丈夫だから』と彼の車をうちの前に車を止めさせたんですが、見事にミドリムシ(orゴキ)にやられてしまったのです。そのお詫びがこのギターアンプの修理です。



 彼は1年ほど前に京都に移住してきたらしいのですが、すごいギタリストです。僕はこんなにギターが弾ける人に生で会ったのは初めてだったので、『もっと弾いてもっと弾いて!』と、夜中なのに僕のギターとアンプでかなりでかい音で長い事ギターを弾かせてしまったんで、うるさかったかも?通報されたかな?。でも、普段は近所の人とは仲良くて、ギターがでかすぎるときは『う〜る〜さい〜!』、『スンマセ〜ン』みたいな感じなので、それに向かいの家は休みの日はよくでかい音でカラオケやってるし、通報ではないかも。だとするとよけいに僕の責任は大きいわけです。



 アンプの状態は、バリバリと雷のようなばかでかいノイズが出るのと、何となくノイジーな感じなので、彼の楽器の面倒を見ている奈良の楽器ビルダーに相談したところ、”真空管を交換”との事で真空管をその楽器屋さん経由で買って彼が自分で差し替えたらしいのですが、真空管が新しいのに、小さい音でもぼろぼろに歪んでしまってもとよりさらにだめになった、、、とのこと。

 電話でこの話を聴いたんですが、だいたいこれだけで事前にざっくり診断はつきました。

 雷のようなノイズは真空ソケットが古くなって熱と振動でゆるゆるになっているせいです。新品に差し替えたら音が余計に歪むようになったのは、ソケットのかなり深刻な接触不良のせいか、もしくは新品の真空管が元から死んでいる。ノイジーなのは、ノイズが”ザ〜”系の音なら6割の感じで初段管の劣化、”ジ〜”系の音ならほぼ原因の8割は電源回路のダイオードとコンデンサーの性能劣化です。
 『元の古い真空管に戻して鳴らしてみて』との電話での僕の指示に、『戻したら使える程度に歪まなくなったけどノイズは元のまま』とのこと。ほぼ故障は上記の範囲で決まりです。
 後日アンプを彼の家に引き取りにいくと、グルーブチューブの赤いロゴが真っ白になった、文字通りとうの昔に”灰になってしまった”EL84が刺さっていました。ギターアンプでEL84は寿命は短いです。

KC4B0311.jpg

 修理前です。真空管は”新品”の方に差し替えてます。真空管が二本指で軽く抜き差し出来るほどにソケットが緩んでいます。鳴らした状態で真空管を揺すると、雷ノイズが出ます。ソケットは見た目きれいですがガバガバです。シャーシ内に2003年製造の表記があります。

KC4B0316.jpg
 解体を進めます。真空管ソケットはサブの基板に載っていて、平行線で結線されています。真空管アンプの出音には良くない配線方法ですので、この契機にサブの基板をやめて配線をやり変えてしまう事にします。

KC4B0319.jpg
 結線をメモりながらコネクターを基板から抜いていきます。

KC4B0320.jpg
 メイン基板をはずしました。

KC4B0321.jpg
 外した基板です。真空管への結線がPCに使うような帯状の平行線、さらにサブ基板にソケットが載っていると、アマチュアのオーディオマニアから見ると全くあり得ない作りです。プレートとグリッドの配線が隣り合ってます。プレートとグリッドは、電位差が数百ボルトとかありますし、しかも信号が逆相なので近づけてはいけないのです。カソードとグリッドは近くても大丈夫です。

KC4B0322.jpg
 写真では分かりにくいのですが、電源回路の一番頭のコンデンサーが微妙に楕円になっています。液漏れ寸前と思われるので交換です。あとは高圧回路のダイオードも交換します。壊れていなくてもこの2つが”ジー”音ノイズの原因の事が多いです。

 KC4B0323.jpg
 基板裏の部品の足を曲げる方向がまずい。機械組み立てだからしょうがないのでしょうが、真空管の回路はいたるところ電圧が高いので隣との配線間の距離が近いのはまずいのです。足の曲げ方向を修正しながら半田を全部盛り直しました。

KC4B0325.jpg
 新しいソケットを取り付けて配線の途中です。ガイシ(磁器)でできた熱に強いソケットを使います。別に高価ではありません。

KC4B0326.jpg
 回路を読みながら配線の検討中です。メイン基板からソケットへ直配線に改造します。配線の間が離れるので音が微妙にシャキッとするかもしれません。不用意に電線を束ねたり基板を詰めて小さく作ったりすると音がドロッとした感じになるような気がします。

KC4B0329.jpg
一応修理完了です。電源のコンデンサーは手持ちの関係で47uFから200uFのブロックコンデンサーになり、かなり大きくなっています。ダイオードも高圧電源の部分のものだけ交換しました。ダイオードやトランジスターは、意外と壊れていなくても劣化します。

KC4B0331.jpg
 組み立て直して鳴らして見ます。ノイズは全くなくなりました。小さな音でしか鳴らしてないんですが、カリンカリンのくせにプリンプリンみたいな、いい音がします。EL84ってギターアンプではすごく良い音しますよね。

KC4B0333.jpg
 交換した部品です。製造から10年と、まだそんなに古くないのと、元の音の素性は変えないようにとのことで余計な部品は交換しませんでした。死にかけのコンデンサー1個と、ダイオード4個と真空管ソケットです。ソケット周りのサブ基板は、せっかく手仕事で修理するんだからこれはやり直しておくべきでしょう、、、って事で。
ラベル:修理
posted by dico at 03:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 楽器制作関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。